2007年2月12日月曜日

バレンタイン特集4 聖バレンタイン・デーと恵方巻き

 3世紀頃のローマでは、兵士は、長期の遠征で何年も帰宅できませんでした。そのことで、兵士の士気が下がらないようにと、兵士の結婚は禁止されていたのです。当時、キリスト教の司祭であった「聖バレンタイン」は、そんな兵士達を哀れみ、こっそりと結婚させていました。当時のローマでは、まだキリスト教は、異教。迫害の対象だったのです。この「聖バレンタイン」の行為は、時のローマ皇帝クラウディウス2世の知るところとなり、西暦269年2月14日、彼は、処刑されてしまいました。
 その当時のローマでは、2月15日に、豊穣と子孫繁栄を祈る春の祭典「ルペルカリア祭」というものがありました。この祭りの前日である2月14日に、女性の名前を書いたくじを男性が引いて、当たっ女性を祭りの間、パートナーにするという風習がありました。
 「聖バレンタイン」処刑の後、ローマ帝国では、キリスト教は、国教となり、広く普及することになりました。その結果、この「ルペルカリア祭」は、異教徒の祭りとして禁止されてしまったのです。ただ、くじ引きの習慣だけは残り、女性の名前に代えて聖人達の名前を書いたくじを引き、引いた聖人の生き方を一年間見習い、まねをする習わしが定着したそうです。そして、おなじ日に殉教した聖バレンタインが、祭りを守護する聖人になったと言われています。
 この季節、ヨーロッパでは、冬が終わりを告げる季節。木々が芽吹き、動物たちの繁殖が始まる季節でもある。そこに、こんな物語が重なり、聖バレンタイン・デーという習慣が、生まれたと言われています。

 さて、日本のバレンタイン・デーは、いつから始まったかというと、諸説あるようですが、神戸の洋菓子店「モロゾフ」が、1936年(昭和11年)に「バレンタインデーにチョコレート」という広告を出したのが最初と言われています。ただ、これはどうも、あまり定着しなかったらしい。その後、1958年(昭和33年)2月に東京・渋谷のメリーチョコレートが、新宿・伊勢丹の売場でバレンタイン・セールとしてチョコレートを発売、翌1959年に、「女性から男性へ」というキャッチフレーズでハート型チョコを発売しました。それが、今日の習慣になったと言われています。

 つまりですねぇ、由緒正しき歴史的な出来事を利用した商業的宣伝に、みんなの載せられてしまったということなんですね。じつは、これ、あの「恵方巻き」にも同じような物語があるんです。
 もともと「恵方巻き」は、江戸時代末期に大阪に始まった習慣といわれています。その当時は、旧暦が使われていたのですが、旧暦では立春前日である節分は、大晦日に当たります。旧年の厄を落とし、来るべき翌年の繁栄を願う行事が、各所で行われていました。そのとき、商人の町、大阪・船場では、商売繁盛を祈願する行事として海苔巻きを食べたと言われている。
 その後、この行事は廃れてしまったようですが、1977年、大阪の海苔問屋協同組合が、海苔の販売促進イベントを道頓堀で開催。これが、きっかけとなって、復活しました。その後、1989年にセブン・イレブンが、恵方巻きを販売し大ヒット。2001年にローソン、2003年にファミリーマートが、販売。一躍全国に普及したようです。

 バレンタイン・デーにしろ、恵方巻きにしろ、由緒正しき歴史的行事と思いきや、なぁーんだ、もともとは、地方の販促キャンペーンだったんじゃない。いやはや、日本人は載せられやすいんですねぇ。でも、世のため人のため、みんな幸せになれるんですから、1700年前の聖バレンタインさんも草葉の陰で、さぞや微笑んでいらっしゃることでしょう。

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